マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌によって引き起こされる肺炎の一種です。発熱が比較的軽度であっても、長期間にわたって咳が続くという特徴があり、「熱はそれほどないのに咳だけが止まらない」という状態で受診される方が多く見られます。子どもや若い世代に多い疾患ですが、成人が感染するケースも少なくありません。症状の出方が風邪と似ているため自己判断が難しく、適切な治療を受けずにいると回復が大幅に遅れることもあります。

マイコプラズマ肺炎の主な症状

感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は2〜3週間程度とされており、他の呼吸器感染症と比べてやや長めです。発症初期は発熱・倦怠感・頭痛といった全身症状から始まり、続いて乾いた咳が出始めます。この咳が特徴的で、熱が下がった後も数週間から1ヶ月以上にわたって続くことがあります。

通常の肺炎では病状が重篤になりやすいイメージがありますが、マイコプラズマ肺炎は「歩ける肺炎」とも呼ばれるほど比較的元気に過ごせるケースも多く、そのぶん受診が遅れやすい傾向があります。しかし咳が長引くことで体力が消耗し、睡眠や日常生活に支障をきたすことも珍しくありません。

合併症とそのリスク

多くの場合は外来での治療で回復しますが、一部では肺炎が重症化したり、肺以外の臓器に影響が及んだりすることがあります。注意すべき合併症としては、気管支炎の慢性化のほか、以下のようなものが報告されています。

  • 中耳炎、副鼻腔炎などの耳鼻咽喉領域への波及
  • 心筋炎、心膜炎(胸痛や動悸を伴うことがある)
  • 神経合併症(脳炎・無菌性髄膜炎など、頻度は低いが重篤)
  • 溶血性貧血(寒冷凝集素によるもの)

こうした合併症は頻度こそ高くないものの、発症した場合の影響は大きいため、症状が通常より強い・長引く・胸痛や神経症状を伴うといった場合は速やかにご来院ください。

風邪とマイコプラズマ肺炎の症状比較

項目風邪(上気道炎)マイコプラズマ肺炎
発熱初期に高熱が出やすい微熱〜中程度が多い
咳の性状湿った咳が多い乾いた咳が持続する
症状の持続1〜2週間程度で回復咳が数週間〜1ヶ月以上続く
全身状態つらさが強いが短期間比較的動けるが長引く
鼻水・鼻づまり出やすい少ない・ほぼない
抗菌薬の効果効かない(ウイルス性)適切な抗菌薬が有効

この表はあくまで目安であり、実際には症状が重なることも多くあります。「咳だけ長引いている」という状態が続く場合は、ウイルス性の風邪とは別の原因を疑う必要があるため、当院での検査をお勧めします。

新型コロナウイルスとの関連

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)もマイコプラズマ肺炎も、発熱・咳・倦怠感といった症状が重なるため、自覚症状だけでは区別がつかないことがあります。コロナ感染後に咳が長引いている場合、回復過程での症状なのか、マイコプラズマをはじめとする別の感染症が重なっているのかを判断するには、検査が必要です。

また、コロナ罹患後に免疫機能が一時的に低下することで、マイコプラズマなどの感染症にかかりやすくなる可能性も指摘されています。「コロナの後から咳が止まらない」という場合も、自己判断せずにご来院いただくことで、適切な原因の特定と治療につなげることができます

マイコプラズマ肺炎の治療の流れ

マイコプラズマは細菌の一種ですが、細胞壁を持たないため、一般的な肺炎に使われるペニシリン系の抗菌薬は効果がありません。治療にはマクロライド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系の抗菌薬が用いられます。

STEP1 問診・診察

咳の性状・発症からの経過・発熱の有無・周囲の感染状況などを詳しくお聞きします。聴診で肺の音を確認し、必要な検査を選択します。

STEP2 検査

迅速抗原検査・血液検査(抗体価・炎症反応)・胸部X線を組み合わせて診断します。マイコプラズマは迅速検査で陰性になることもあるため、症状の経過や血液データを総合的に判断します。

STEP3 抗菌薬による治療

症状・年齢・基礎疾患を考慮したうえで、適切な抗菌薬を処方します。服薬を途中でやめると再燃や耐性化のリスクがあるため、指示された期間は最後まで続けることが重要です。

STEP4 経過確認

治療開始後も症状の改善具合を確認します。抗菌薬を変更しても効果が不十分な場合や、重症化の兆候がある場合は、入院設備のある医療機関へご紹介します。

マイコプラズマ肺炎に関するよくある質問

Q1. 家族にうつりますか?感染力はどのくらいですか?

A. 飛沫感染と接触感染によって広がります。感染力はインフルエンザほど強くはありませんが、同じ空間で長時間を過ごす家庭内や学校・職場での感染は起こり得ます。治療開始後も数日間は感染源になり得るため、手洗い・マスクの着用・咳エチケットを徹底してください。

Q2. 市販の風邪薬を飲んでいましたが、効いていません。

A. 市販の総合感冒薬はウイルス性の風邪の症状を緩和するものであり、マイコプラズマには効果がありません。咳が2週間以上続いている場合は、そのままにせず当院へご来院ください。原因を特定したうえで必要な薬を処方します。

Q3. 子どもが感染した場合、登校はいつから可能ですか?

A. 明確な出席停止基準は設けられていませんが、発熱がなく全身状態が回復し、医師が感染のおそれがないと判断してからが目安となります。学校や園のルールと合わせて、診察時にご確認ください。

Q4. 一度かかったら免疫ができますか?

A. 感染後にある程度の免疫は得られますが、その持続期間は長くなく、再感染することがあります。特に数年以上経過すると感受性が回復するとされているため、過去に罹患したことがあっても繰り返し感染するケースがあります。

咳が長引いている方・熱はないのに体がつらい方へ

「風邪が治らない」と感じている症状が、マイコプラズマ肺炎である可能性があります。

自己判断で様子を見ず、ぜひ当院へご来院ください。適切な検査と治療で早期回復をサポートします。

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